
11月17日(土)名古屋都市センターにて第10回の建築コンクール公開審査およびシンポジウムが行われました。
今回は「醸しだす建築」…。
毎回ですが今回も難題。シンポジウムでは各審査員が5枚のスライドを使って醸しだす建築を説明しました。今回はいつにも増して難しいというフレーズが先生方からたびたび聞かれました。ここではサラッと。あいうえお順で。

伊礼智さん
建築家:岩崎駿介氏の自邸・落日荘のセルフビルドを通して「創ること、暮らすこと、考え続けることの苦悩や喜びや迷いが熟成され芳醇な建築となって醸しだされる」
江尻憲泰さん
燻す(メキシコの鳥小屋)、熱海のカフェ、土壁、醤油工場の竹の耐震補強、耐震ダンパー(物議を醸すので説明はなし)、竹の建築 竹を建材として利用できないか物議を醸してほしい!
栗生明さん
増沢洵氏設計の新宿風月堂から宝塚の男装の麗人・朝夏まなとを経由して宝塚の大階段の話からさせぼ五番街の階段へ。
中村好文さん
京町家を改修した宿泊施設と長野県御代田の住宅改修について。どちらも本を媒体としてその場所との関わりを醸しだす美しく洗練された建築。
古谷誠章さん
高知県宿毛まちのえき林邸、岐阜県美濃加茂市旧伊深村役場庁舎、ロシアウラジオストックのホテル、新潟県長岡市摂田屋の機那サフラン酒土蔵、佐賀県鹿島市浜町の市民会館と近作を通してのお話。人の文化が醸成しているところには必ずいいお酒が醸成しているのか、いいお酒が醸成されているところには文化が醸成されているのか…。もう切っても切れない。
今回は各人各様の“醸しだす”を聞けたように思います。

公開審査では49作品の中から三宅正浩・吉本英正両氏の「囲の家」が最優秀賞に選ばれました。周辺の建築的要素、赤い屋根とブロック塀を巧みに住宅に取り込んで街へ溶け込んでいる作品でした。おめでとうございます!
その後は懇親会へ。今回は過去の受賞作品のスライドを肴にコンクール自体を大いに語り合いました。もちろん毎回恒例の落選者からの主張!もありました。なぜ解ってくれないの?選ばなかったの?お酒の力も借りつつ自分の主張もし審査員の考えも聞ける、大人になるとなかなか無い機会でした。

さて。10回目を終えて、これまでお世話になった審査員の先生方とは今回でお別れとなりました。次回からは新たな形での再スタートを予定しております。
これからを見据えどんな方向性でこのコンペを行っていくのか。どんなモノ・コト・建築について、コンクール開始当初の目的『建築の価値を広げる』ことができるのか。
小さな支部の大きな試みが広げる建築の価値を探っていきたいと思います。
