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鴻池慎二 建築コンクール委員

「岡崎と岩瀬遠足」開催報告 ~建築コンクールスピンオフ企画~



“遠足”

前日に買い込んだおやつとお弁当をリュックに詰め、水筒を小脇に抱え、ワクワクしながらバスに乗り込む。楽しいに決まっている。毎日の授業がつまらなくても“遠足”は特別。そんなわくわくを大人になっても自分で企画して、わがまち・岡崎を楽しんでいる人がいました。イベントオーガナザーとして2011年から森、道、市場を主催、第12回建築コンクール「ねちっこい建築」で審査員をお願いした岩瀬貴己さんです。


水筒の代わりにロング缶のお酒を片手に岡崎のディープな魅力をめぐる岩瀬遠足を楽しんでいました。第13回の建築コンクール(2022年2月5日開催の翌日)に合わせて岩瀬遠足の企画をお願いしていましたが、残念ながら2021年11月にお亡くなりになりました。生前、岩瀬さんとも深く関わり今回の企画についても岩瀬さんから相談を受けていた「岡崎まち育てセンター・りた」の天野裕さんにご連絡を頂き、岩瀬遠足の実現に至りました。

今回の遠足は第12回建築コンクールのシンポジウムで岩瀬さんが紹介してくださったスポットを中心にめぐりました。副題は「岡崎空襲の戦災区域とまち歩きルート」でした。

籠田公園→石屋通り→誓願時→連尺商店街アーケード跡→杉田石材店→甲山旅館→木造アーケード→ といったルートです。





最後の松應寺には境内に木造アーケードがあり、その中にはスナックが。戦後花街の名残が感じられます。一杯飲んで、歌を歌って、お参りして帰る。岡崎ではこんな日常があったのかなんて想像します。岩瀬さんが歩いていたのもこんなまちだったのか。家康の時代からの歴史があり、物語がある。その物語をその場所に住む岩瀬さんが語る。(今回は天野さん)。途中、地域の少年を見つけて話をしている天野さんの後姿には、地域との深いかかわりを感じました。







今回歩いたのが戦災を免れた地域が多かった事もありますが、歴史と物語があるだけで地域にとっての誇りになることは容易に想像できました。また、岡崎がこれほど坂のまちだ知ったのは新たな発見でした。まちの周囲に行くほどに坂が現れ道が狭くなり路地になり濃密な生活感が漂います。そして振り返るとまちを一望できる。一杯飲みながら眺めるこの景色をみんなに紹介したかったのだと。森、道、市場を最初に開催した三ヶ根山ロープウェイ山麓駅跡周辺についても当時のインタビューで以下のように語られていました。


-岩瀬さん:まず、三ケ根山(愛知県蒲郡市にある山)に初めて行ったときに、こんなおもしろい場所があったのか!って思ったのがきっかけですね。で、この場所をみんなが見に来たら、おもしろがってくれるんじゃないかな?という、単純な思いで。


ーインタビュアー:ちなみに、三ケ根山へは何しにいったんです?

-岩瀬さん:たまたまなんです。道を間違えてしまって、行き着いたところにあったのが三ケ根山でした(笑)。森の中に廃屋がたくさんあって、なんだここは!!っていう。

(WEBマガジンLIVERARY 2013.11.11掲載、Special Interview : 森道市場実行委員会より)


今となってはわかりませんが、岩瀬遠足も森、道、市場も自分が面白いと思ったものをみんなに知ってほしい、体験してほしいという思いだったのではないでしょうか。そして体験するとやっぱり楽しい。気持ちいい。おいしい。他の誰かが何か企んでいると“それって楽しいの?”と話しかけてくる岩瀬さん。楽しいことをいつも探しているそんな人だったのかなぁと。。。

岩瀬さんと言えば森、道、市場がクローズアップされがちですが、「ついたち意匠考案室」で建築関係の仕事もされていました。松應寺参道の木造アーケードや岩瀬氏のパートナー順子さんが営む飲食店 at the table est 2015 の店舗などまちのいたるところに岩瀬さんが係わった形跡が。困ったことがあったら岩瀬さんに相談。といった存在だったようです。またどれも特別な材料が使われているわけではないのにかっこいい。帰りには at the table est 2015 にて食事を頂きながら、岩瀬さんのこと、岡崎のこと、これからの事たくさんお話を伺いました。あたたかい空間の大きなテーブルで頂く食事は冷えた体に沁みました。最後の文旦+チーズ(モッツアレラ?)+はちみつ。これは爽やかで濃厚で最高の一品でした。(すぐに食べてしまったので写真はありません)


という具合に丸一日、岡崎を満喫して帰路につきました。帰り際に銭湯でも入って帰れたらよかったのですが、岡崎最後の銭湯、龍城(たつき)温泉は廃業の危機に瀕していて、臨時休業中という情報を天野氏から教えていただいたので今回は断念。現在支援の輪が広がっているようです。(龍城温泉ファンクラブが活動中)昔ながらの銭湯。岡崎のまちに是非残ってほしいところです。



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​公益社団法人愛知建築士会名古屋北支部

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